石積み

景観には、そこで暮らす人々の営みや、社会の有り様が映し出される効果があると思います。耕作放棄地や手入れされなくなった薄暗い人工林から受ける、どこか淋しい印象は、近代化の中で見失ってしまった何かを象徴するようです。

耕作しにくい斜面地に平らな面を築いて、生産性を向上させる。こうやってこしらえた畑が崩れないように、石を積んでしっかり土を留める。斜面地の多い里山や山間地域では、それゆえに農地石垣がごく普通に見られます。当然、身近にある石が使われている。石の種類によって積み方にも特徴があることから、地域固有の、特徴ある景観が生まれるわけです。